· 

武蔵野うどん - 東京 石神井「むさしの エン座」

東京 石神井公園内で、お洒落な練り込み麺が印象的な「むさしのエン座」さんを訪ねました。

練馬産のお野菜を酒肴に、〆にはもちろん糧うどんをいただきました。

 

そして、練馬区付近のうどんの歴史を確かめてみましょう。

 

今回のポイントはこちら。

 ☑ 練馬地産のお野菜を酒肴に、〆に武蔵野うどんを美味しくいただきました!

 ☑ 練馬区では明治には小麦が作られていることを確認できました!

樹々に囲まれたアクセス

お店は、練馬区立石神井公園ふるさと文化館内にあります。

 

最寄りは西武池袋線・石神井公園駅で、1kmを超えます。

徒歩だと15分から20分ほどかかりますが、公園内の散歩を楽しむなら徒歩も良いと思います。

 

バスなら次の各駅から石神井公園付近で下車し、"ふるさと文化館"を目指します。

  • 西武池袋線 石神井公園駅、大泉学園駅
  • 西武新宿線 上井草駅
  • JR中央総武線・東京メトロ丸ノ内線 荻窪駅
  • JR中央総武線・吉祥寺駅

鉄道と徒歩だけでは往復にやや時間がかかるので、バスやタクシーなどの利用がよいでしょう。

行きにバスやタクシーを使い、公園内を散歩しつつ最寄り駅へ帰るのもおすすめです。

 

詳しくはお店のWebページに案内があります。


人の繋がりをテーマした内観

ふるさと文化館は2010年に開館した建物で新しく、大きなガラス張りになっていることから開放的で明るい印象があります。

1階の休憩コーナーへ向かうと、お店の入口には暖簾がかかり、さまざまな張り紙が見えます。

 

使用されている小麦粉の説明書きも見られます。

どうやらこの日は、しっかりした食感になる「ASW」を中心に、国産の全粒粉がブレンドされていますので、麺に味があるようだとわかります。

名簿に書いて待合の椅子に座って順番待ちをしていると、声がかけられます。

暖簾をくぐってみます。

 

天井が高く広々としており、外からの光が通る店内は明るい印象です。

そして店内の中心に円卓のカウンター席があり、周囲には2人掛けと4人掛けのテーブル席があります。

店名には"車座のように円く座る「円」"の由来があるようで、この円卓のカウンター席はお店のテーマを表現するシンボルでもあるようですね。

 

客層は年齢層が40代、50代以上のグループや家族連れが中心のようです。

練馬の地野菜を酒肴に〆の武蔵野うどんを楽しめる

ドリンクメニューを見ていていると「地ビール(各種)」とあるのが目に留まります。

練馬産のイチゴのビール、ブルベリーのビールなどがあり、「練馬金子ゴールデンビール」をオーダー。


練馬を冠した不思議な名前なので調べてみると、国産初のビール麦「金子ゴールデン」が練馬で栽培されていたそうです。

それが昭和には途絶えることになるのですが、農業生物資源研究所で見つかったビール麦を使って平成15年から練馬区内で復刻栽培が始められ、福生の石川酒造さんで醸造したビールが「練馬金子ゴールデンビール」として出荷されているようです。

福生の石川酒造さんのWebページではお酒造りに福生の150m地下、上総層群・東久留米層下部層から汲み上げた中硬水の地下水を使用している、との説明書きがあります。

お酒作りに欠かせない美味しい水は、同じ東京の地下水なのかもしれません。

 

そんな練馬金子ゴールデンビールは一見すると見慣れたペールエールの雰囲気ですが、きめ細かい炭酸と香りとフレッシュさを感じる香りにほろ苦さがほどよく、瓶内二次発酵で瓶底からオリがみられるなど、飲んでみると美味しいビールです。

 

空が青く晴れた明るい昼に公園を散歩し、ビールをつつつといただくひととき。

たまりませんねぇ~(*˘ᗜ˘*)♡

 

つまみにまず「しょうゆ豆」をオーダー。

 

そして「お浸し」も。

手作り感が良いですね(*˘ᗜ˘*)

 

さらに「地野菜のかき揚げ」も登場。

薄衣でかぶりつく感じでいただきます。

 

〆のおうどんをオーダーするのですが、通し揚げでオーダーしてからゆで始められることから提供されるまでに少々待ち時間がありますので、待ち時間のつまみに「いりこピックル」をちびちびとつまんでみます。

ピックルは酢の物で、さっぱりします。

 

でも、イリコをよく見てください。

頭とワタが取られたイリコが、半身に開かれて、いくらか皮まで取り除かれています。

これはうどんのかけつゆに使われたイリコで、中羽から大羽ほどのサイズなので、出汁には臭みがないカタクチイワシのしっかりした旨味が使われ、出汁の引き方に気を使われていることがわかります。

 

そして、お待ちかね、〆の「糧うどん」です。

この日はパープル、オレンジ、グリーンの3色の練り込みうどんが添えられています。

どうです、このシグネチャ。

 

また、白いうどんにも斑点状に全粒粉の色が見られます。

 

頬張ってみると、口あたりはナチュラルな滑らかさで、のっぺりした食感が感じられます。

そして、ナチュラルな小麦の甘みのある風味も感じることができます。

 

つけつゆには醤油がしっかりきいていますが、ゴロゴロと具材が入っていて、すすって飲むというよりは食べる感じで進みます。

 

昭和の懐かしさに思いを馳せるおうどんの味

そして、都内・練馬地産のお野菜やお酒を楽しめるのは良いですね!

ごちそうさまでした!٩(ˊᗜˋ*)و

 

また酒肴と〆のうどんを楽しんでしまった・・・


練馬区周辺のうどんの歴史を垣間見て、散策

さて、そんな石神井公園周辺には、どのようなうどんの歴史があるのでしょうか?

 

多摩地方の各市の歴史を追ってきましたが、練馬区は23区ということもあって調べる予定はありませんでした。

しかし、むさしのエン座さんがあるふるさと文化館の2階には歴史に関わる常設展示と、交流ライブラリーのコーナーに地史の史料が見られます。

予定外ではありますが、流しでうどんの歴史を調べてみます。

●江戸時代の記録はよくわからない

「練馬区史」上巻などを開いてみますと、江戸時代の明細帳ではそばは明記が見られます。

しかし麦類については麦とあるものの、それがうどんに適した小麦かどうかがわかりません。

後に、1876(明治9)年「第八大区八小区下土支田村明細帳」では小麦の記載が見られ、明治以降については練馬あたりで小麦が作られていたことが明確なようです。

 

また、農間渡世でもうどん屋やけんどん屋らしき職業を見つけることができず、うどんが作ったり食べられていたことは確認できませんでした。

 

まとめます。

調べた範囲では、練馬周辺で明治頃には小麦が作られていたことは確認できるものの、江戸時代にうどんが作られたり食べられたりしていたことの記録は見つけられず、このあたりのうどんの歴史についてはよくわかりませんでした。

●昭和の食文化として紹介されるうどん

ところで、ふるさと文化館の常設展示には、うどんに触れた小さなコーナーがあります。

昭和の戦前頃には、麦飯や稗、粟を食べていた農家の生活があり、まんじゅう、うどん、白飯を食べられることは喜びとされていたそうです。

 

けんどん史考で確認してきたように、江戸時代にはうどんを外食できるようになっていました。

しかし一方で、小麦を作っている農家にとっては大麦よりも割高に売って年貢を納めることができた小麦を自分で食べることは贅沢なことでした。

 

また、武蔵野ふるさと歴史観の2018年企画展「武蔵野のうどん」と増田昭子氏の関連講演会「武蔵野の食文化」でお伺いしたお話によると、うどんの材料である小麦の製粉は、特に女性にとっては何十kgもある石臼を回す必要があり、大変な労力だったようです。

 

そして量り売りで小麦粉を買ったとしても、食べるのにも困っている時代に捏ねる手間をかけて作って食べることは、やはり贅沢なふるまいの一つであったようです。

 

ところで、関西地方の昭和初期に生まれた世代からは、既に白飯を中心に食べていたことを聞きます。

その後、幼少の頃に家でうどんを打つ風習があったものの、昭和40年代にはスーパーマーケットで購入した麺を湯がいて食べており、昭和50年代ごろには美味しくなった冷凍うどんを食べるようになったと記憶しています。

 

ふるさと文化館にみられるこの展示は、昭和のはじめから昭和20年代ごろくらいの古き日本、特に平成31年の4月を過ぎると次の元号になる日本人にとっては、幼少の頃の親類や家族との時間にあった、懐かしい思い出のうどんにあたるものなのでしょう。

●石神井公園を歩く

石神井公園にはふるさと文化館のほか、プールや石神井城跡、古民家の展示などもありますが、やはりスワンボートに乗れる池と樹々のある公園の風景が良い場所です。

池には水鳥たちが群れで過ごしています。

水から上って休んでいる姿を間近で見ることもできました。

日が暮れてきましたので、帰ることにしたいと思います。

みなさんも、散歩を兼ねて訪ねられてはいかがでしょうか。

お出口リンク

記事店舗

 

周辺観光


調査文献: 

  1. 練馬区「練馬区史」上巻